ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 
3.1 早期のリスク評価
 患者の病歴や身体所見,来院時(入院時)の心電図所見や心筋バイオマーカーなどの情報を収集してリスクを評価する.年齢,収縮期血圧,心拍数,Killip 分類や梗塞部位は重要な予後予測因子である145).その他,心筋梗塞や脳血管障害,末梢動脈疾患の既往,糖尿病や高血圧,CKD(慢性腎臓病)の合併や喫煙も予後予測因子となる.また,来院時(入院時)の心筋トロポニンT やトロポニンI,脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide:BNP)またはN 末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NTproBNP)などの心筋バイオマーカー上昇や,ST 上昇の早期回復が,STEMI の早期リスク評価として有用である392,393).primary PCI 施行の有無に関わらず,来院時(入院時)心筋トロポニンの上昇は短期および長期死亡の予測因子となる394,395)

 近年,わが国におけるSTEMI 患者に対するprimary PCI の施行率は地域に関わらず高く,院内死亡率は20 年前に比較して著明に減少した396).一方で,冠動脈解離や破裂,再閉塞やno reflow現象などのPCIに関連した合併症や,冠動脈造影後の出血や造影剤腎症などにも注意が必要である.再灌流治療施行の有無や成功,不成功に関わらず,CCU 収容後は,突然の不整脈や血行動態の異常,機械的合併症などに対する対応を準備しておく必要がある.
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