ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 
 房室ブロックに対する恒久ペーシングの適応は,His-Purkinje 系あるいはより末梢での伝導障害があるか否かによる.必ずしも症状の有無により恒久ペーシングの適応が決定されるわけではない.STEMI 急性期において一時ペーシングが必要とされても,その全患者が恒久心室ペーシングの適応条件を満たすわけではない.房室ブロックの消失が期待される場合や長期予後に悪い影響を及ぼさない場合は,ペースメーカの植込みを急ぐ必要はない.房室ブロック合併後1 週間以上経過してから自己の房室結節伝導能が回復した例もある.房室ブロックを合併した症例の長期予後は,房室ブロックの程度に関連するのではなく,心筋傷害の大きさや心室内伝導障害の特徴に関連する474)

 洞機能不全に対する恒久ペースメーカの適応は,心筋梗塞の有無によって変わらない.『不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011 年改訂版)』に準じて治療する475).ただし,洞機能不全が,下壁心筋梗塞発症後1 時間以内あるいは右冠動脈の再灌流後に出現した場合は一過性である場合が多く,一時ペーシングが必要になっても,原則として恒久ペースメーカの植込みは避ける.
クラス I
・STEMI 後,両側脚ブロックを伴うHis-Purkinje 系での第2 度房室ブロック,His-Purkinje 系,あるいはより末梢での第3 度(完全)房室ブロックが持続する.
  レベルB
・房室結節より末梢での,脚ブロックを伴う,一過性の高度房室ブロックあるいは第3 度の房室ブロック. レベルB
・症状を伴う第2 度あるいは第3 度の房室ブロックの持続. レベルC
クラス IIb
・房室結節における第2 度あるいは第3 度の房室ブロックの持続. レベルB
クラス III
・心室内伝導障害を伴わない一過性房室ブロック. レベルB
・左脚前枝ブロックだけを伴う一過性房室ブロック. レベルB
・房室ブロックを伴わない後天性左脚前枝ブロック. レベルB
・陳旧性,あるいは発症時期が不明な脚ブロックがある場合の持続する第1 度房室ブロック. レベルB
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 STEMI に伴う房室伝導障害に対する恒久ペースメーカの植込み.
4.3.5 恒久ペースメーカの植込み適応