ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 

 IABP は拡張期の冠血流量を増加させ,心筋の仕事量を減少させる.これらの効果は虚血の残存や再発,心機能低下による血圧低下,心原性ショックの患者にとくに有効である.心臓カテーテルや血行再建を予定している患者に対しても血行動態を安定させるのに役立つ. STEMI 後の心原性ショックの患者でIABP を用いても循環補助が不十分な場合は,機械的補助循環が考慮される.PCPS は経皮的に挿入可能であり,高度な左室機能不全や呼吸不全を合併する患者に有用である.しかし,出血や血栓症の合併により1 週間程度しか使用できないことが多く,また左室の前負荷軽減作用の低いことが問題となる.左心補助装置(left ventricular assist device:LVAD)は装着の際に開胸操作が必要であるが,PCPS よりも左心補助作用および左室前負荷軽減作用が強く,より長期の使用が可能である.しかし,その際には心移植の適応について検討が必要になる.最近,欧米では,STEMI の心原性ショック時に新しい循環補助装置,経皮的循環補助用血液ポンプカテーテル(Impella)を用いた臨床研究が行われ,IABP より効果が高いと報告された509)
6.3 機械的補助(IABP, PCPS, LVAD)
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