ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 

 深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症の合併が疑われた場合には,わが国のガイドライン『肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン(2009年改訂版)』586) に基づいた診療を行うべきである.深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症を合併したほとんどの患者では,ヘパリンを用いた抗凝固療法が行われるべきである.米国のガイドラインでは低分子へパリンによる抗凝固療法を推奨しているが,わが国では,低分子へパリンの使用は一般的ではない.低分子へパリンは,総死亡率について通常のヘパリン(未分画ヘパリン)と同等かそれ以上に効果的であることが報告されている587).未分画ヘパリンは,効果がしばしば不安定であり,投与量を調節するため頻回の採血検査が必要であるが,低分子へパリンは,そのような煩わしさはない.ワルファリンはヘパリンの投与開始と同時に投与を開始する.ヘパリンはPT-INR が治療域である2~3 になるまで継続する588,589).ワルファリンの投与期間は個々の患者のリスクや病態を考慮して決定する590).ヘパリンによる抗凝固療法が禁忌である患者は,ヘパリンに代わる治療が必要であり,下大静脈フィルターの留置も考慮する.ワルファリン治療継続期間,ヘパリン以外の抗
凝固療法,下大静脈フィルターの適応基準などは,静脈血栓塞栓症のガイドラインに従う586,589)
8.2.1 治療
次へ