ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 
絶対的禁忌
・不安定狭心症または閾値の低い(2METs〈平地ゆっくり歩行〉以下で誘発される)心筋虚血.
・コントロールされていない不整脈(心室細動, 持続性心室頻拍など).
・非代償性(体液量がコントロールされていない)心不全.
・重症かつ症候性の弁狭窄症, 弁逆流症, 先天性心疾患, 左室流出路狭窄.
・活動性の心筋炎, 心膜炎.
・急性全身性疾患または発熱.
・運動療法が禁忌となるその他の疾患(中等症以上の大動脈瘤, 重症高血圧, 血栓性静脈炎, 2 週間以内の塞栓症, 重篤な他臓器
障害など).
相対的禁忌
・急性心筋梗塞発症9 日以内で, 心破裂のリスクが高い例(ST 上昇が持続または再上昇を示す例, 心膜液が進行性に増加す
る例)*.
・運動により収縮期血圧が低下する例.
・中等症の弁狭窄症または左室流出路狭窄.
・運動誘発性の中等症不整脈(非持続性心室頻拍, 頻脈性心房細動など).
・高度房室ブロック.
・運動による自覚症状の悪化(疲労, めまい, 発汗多量 , 呼吸困難など).

 心疾患患者に対する運動療法の禁忌を(表8)に示す.2001 年のAHA 基準789) では,発症2 日以内のSTEMI 患者は運動負荷試験の絶対的禁忌とされ,強い運動負荷試験や積極的な運動療法は勧められないが,室内排便負荷や室内歩行程度の活動は12~24 時間後には許可される.再灌流療法非施行または不成功の患者は心破裂のリスクがあるため,一般的に発症2~3 日以内に血圧上昇を伴う運動負荷試験を施行すべきではない.さらに再灌流療法非施行または不成功で,発症後2~3 日以降もST 上昇が持続する患者,いったん出現した陰性T 波が消失しST 再上昇を示す患者,心膜液が進行性に増加する患者は心破裂のリスクが高いと考えられ,心破裂リスクが持続する発症9 日目までは血圧上昇を伴う積極的な運動療法を控える.
2.1.3 運動療法の禁忌
表8 心疾患患者に対する運動療法の禁忌
: 心破裂リスクの高い急性心筋梗塞例では, 発症9 日目までは血圧上昇を伴う積極的な運動療法は控えることが望ましい.
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