ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 

 限られた医療資源を有効に使い,患者がその病状に応じた適切な医療を受けられるようにするためには,医療機関の機能分化を図られなければならない.

 急性心筋梗塞患者の急性期病院からの退院後管理では,急性期病院とかかりつけ医が診療を行う病院や診療所とのあいだで十分な情報の共有と役割分
担による病病連携,病診連携が重要である.わが国の厚生労働省の考える急性心筋梗塞の医療体制でも,平成19(2007)年の第5 次医療法改正では
823),「地域連携クリティカルパスの普及を通じ,医療機能の分化・連携を推進し,切れ目のない医療を提供する」ことが明記されている.リハビリテーションの
可能な病院では,回復期の心臓リハビリテーションや再発予防の治療を行い,さらにクリニックや診療所では再発予防治療や基礎疾患,冠危険因子の管理
により再発予防を担うことが提起されている.これを受けて,各都道府県の地域医療計画が策定され,地域連携クリティカルパスが提唱されており,地域内で
各医療機関が各患者に対する治療開始から終了までの全体的な治療計画を共有することを目指している.現在のところ,循環器疾患の地域連携クリティカル
パスとしては,地域中核病院の専門外来とかかりつけ医との連携に関する病診連携クリティカルパスが中心となっている824-826).

 病病連携,病診連携の充実により,患者には通院時間や医療機関における待ち時間の短縮,通院に要する費用の削減や通院時間の短縮などの経済的利
便性,通院間隔の短縮に伴う虚血の再発や心不全など,併発症の早期発見率の向上などが期待される.また,病院にとっては,再来患者数の減少による患
者一人あたりの診察時間の増加,あるいは新患数の増加による手術数の増加が期待されている.しかし,最近の地域連携パスの全国実態調査の結果で
は,急性心筋梗塞地域連携クリティカルパスの実施率は,循環器専門医研修施設の10 %と低率であり827),さらなる連携パスの普及が求められている.ま
た,病病連携,病診連携の充実には,単なる経済的な利便性や効率の向上だけでなく,専門病院の医師とこれに連携するかかりつけ医が,ともに二次予防
の達成という共通の目的を持った診療を行うことによる医療の質向上という,より大きな成果が期待されている.
3.4 病病連携,病診連携,地域連携パス
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