ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 
3.2.1 β 遮断薬
クラス I
・高リスクでβ 遮断薬に対する禁忌がない患者への経口投与. レベルA
クラス IIa
・低リスクでβ 遮断薬に対する禁忌がない患者への経口投与. レベルB
: 再灌流療法に成功し,左心機能が正常かほぼ正常で,重篤な心室不整脈を認めない.
クラス III
・冠攣縮の関与が明らかな患者に対するβ 遮断薬の単独投与. レベルB
・下記を認める患者への投与.
①血行動態の安定しない中等度~高度の左室機能不全患者,心原性ショック. レベルC
②収縮期血圧100 mmHg 未満の低血圧. レベルC
③心拍数60/ 分未満の徐脈. レベルC
④房室ブロック(第2 度,第3 度). レベルC
⑤重症閉塞性動脈硬化症. レベルC
⑥重症慢性閉塞性肺疾患または気管支喘息など.レベルC
 STEMI を対象にβ 遮断薬の予後改善効果を検討した無作為比較試験の結果をもとに,欧米のガイドラインでは,血行動態が安定したβ 遮断薬に禁忌がない患者に対するルーチンの経口投与がクラス I またはクラス IIa で推奨されている.

 しかし,近年,STEMI 患者に対するprimary PCI 施行率は高く,STEMI 発症後早期に血行再建術に成功したリスクが少ない患者に対するβ 遮断薬の予後改善効果に関しては十分検討されていない.動脈硬化性疾患の国際レジストリー研究であるREACH レジストリー397) では,β 遮断薬が投与されている心筋梗塞患者における心血管事故(心血管死亡,非致死的心筋梗塞および脳梗塞)抑制効果は証明できなかった.わが国におけるprimary PCI に成功したSTEMI を対象とした観察研究においても,血行再建術に成功し,左室駆出率40 %以上で,重篤な心室不整脈を認めない低リスクの患者においては,β 遮断薬による予後改善効果は証明されていない193,398)
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