ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 
クラス I
・容量負荷の所見がない患者に対する迅速な輸液. レベルC
・低血圧の原因となりうる不整脈(調律障害,伝導障害)の治療. レベルC
・迅速な輸液に反応しない低血圧例に対する血管収縮薬投与. レベルC
・心エコー法による心機能の評価と機械的合併症や右室梗塞の検索. レベルC
クラス IIb
・再灌流療法が行えない場合のIABP 使用. レベルC
5.3.1 低血圧
 低血圧を呈する病態としては循環血液量の減少,不整脈,広範な梗塞によるポンプ不全,心筋梗塞に伴う機械的合併症(心室中隔穿孔,僧帽弁乳頭筋断
裂,左室自由壁破裂),右室梗塞などがある.またPCI や血栓溶解療法に伴う出血性合併症などのトラブルが原因となる場合もある.

 したがって,低血圧患者に対しては明らかな左心不全の徴候がなければ治療の第一選択は迅速な輸液であるが,心エコー法による心機能評価,機械的
合併症などの評価と血液検査による貧血などの確認は必須である.高度徐脈が原因となっている場合には体外式ペーシングを行う.

 PAMI-II 試験では,明らかな心不全を伴わない急性心筋梗塞患者に対するPCI 後の予防的IABP は 有用性が証明されなかった498).しかし,この試験で
は,PCI が不十分であったり,合併症を生じた患者や,3 枝病変や左主幹部病変を有する患者などが除外されており,このような患者に対してのIABP 予防
的使用の有用性が否定されたわけではない.
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