ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 

 従来,Q 波梗塞は貫壁性,非Q 波梗塞は非貫壁性(心内膜下)と考えられていたが,この概念は必ずしも正しくなく,最近の心臓MRI による研究ではQ 波の存在は貫壁性の有無よりも,その広がりに影響されると報告されている605).T 波の変化から心筋バイアビリティを推定することもできる.再灌流に成功し心筋バイアビリティが存在する場合は早期(発症24 時間以内)に深い陰性T 波が出現する.しかし,慢性期において前壁梗塞で異常Q 波を認める誘導での陰性T 波の持続は,壁全体が線維化した貫壁性梗塞と関連している.このように時期により陰性T 波の臨床的意義は異なることに注意する.一方,異常Q 波のある誘導でのT 波の陽性化は心
筋バイアビリティの存在を示唆し,病理学的に非貫壁性梗塞であるとされている606).Q 波梗塞における異常Q 波の退行およびR 波の出現も心筋バイアビリティの存在が示唆され,R 波が高いほど左心機能の改善が期待できる607)
9.1.4 心筋バイアビリティの有無
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