ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 
クラス I
・責任冠動脈および梗塞サイズの推定を目的として心エコー法を行う. レベルB
9.3 心エコー法
 局所壁運動異常の部位とその広がりから,責任冠動脈および梗塞サイズの推定が可能である.また,機械的合併症の診断を含む再灌流療法の効果判定も可能である.コントラスト心エコー法(心筋コントラストエコー法)を用いれば,壁運動異常部位の微小循環レベルでの再灌流の評価から心筋バイアビリティが推定できる.

 急性心筋梗塞において,心電図変化で診断が困難な患者(左脚ブロック,WPW症候群など)で,局所壁運動異常が観察できれば診断に有力な情報となる.米国心エコー図学会(ASE)では,左室壁を16 分画(心基部を6 分画,中部を6 分画,心尖部を4 分画)して,各セグメントの壁運動評価を行うことを提唱しており616),この評価法がより有用である.壁運動の程度を視覚的に正常(normokinesis:1 点),低収縮(hypokinesis:2 点),無収縮(akinesis:3 点),奇異性運動(dyskinesis:4 点),瘤形成(aneurysm:5 点)の5 段階評価を行い,その合計点を観察可能であった分画数で除して平均点(スコア)を求め,全体の壁運動異常を評価することができる617).このように心エコー法から求めるスコアは,CK や核医学検査から推定される梗塞サイズと相関する618-620).ただし,壁運動異常は一過性(気絶心筋)あるいは慢性の心筋虚血(冬眠心筋)のように,心筋バイアビリティが保たれている状態でも出現するため,急性期の壁運動異常の広がりは梗塞を過大評価している可能性があり621),再灌流成功例で認められることが多い.このような領域の心筋バイアビリティ評価にコントラスト心エコー法が有用とされている.梗塞領域でも心筋染影がよいほどその後の心収縮能の改善が良好である622).心エコー法については『循環器超音波検査の適応と判読ガイドライン(2010 年改訂版)』623) のIX 章に詳細な記述がある.
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