ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 
9.4 心臓核医学検査
クラス I
・梗塞サイズと心筋バイアビリティ評価,およびrisk area の検出を目的として血流シンチグラフィを行う. レベルB
・再灌流療法の効果の評価を目的として血流シンチグラフィを行う. レベルB
クラス IIb
・梗塞周辺の気絶心筋の診断を目的として123I-BMIPP シンチグラフィを行う. レベルC
 STEMI の予後は,おもに左室機能,梗塞サイズ,および梗塞,非梗塞部の虚血心筋の大きさによって決定される.これらはいずれも核医学イメージングによ
り評価可能であり,初期治療後の安定した時期の核医学イメージングにより重要な情報が得られる624).心筋血流製剤には201Tl625,626) と99mTc sestamib(i
MIBI),99mTc tetrofosminなどの99mTc 心筋血流製剤が用いられているが627-630),梗塞サイズ推定や心筋バイアビリティ評価における診断精度はほぼ同
等とされている631)

 心エコー法と同様に左室を17 分画ないしBerman らの20 分画632) で集積程度を視覚的に5 段階評価する.スコアの総和が大きいほど梗塞範囲が広い.局
所の集積程度を健常部の集積程度と比較して算出する%uptake は心筋バイアビリティの指標であり,一般的に安静像において%uptake50 %以上は心筋
バイアビリティありを示唆する.

 メタ解析では,99mTc MIBI による心筋バイアビリティ判定は,感度83 %,特異度69 %と報告され,201Tl より特異度が高いとされている633).なお,検査前
に硝酸薬を事前に投与しておくと診断率が向上する634).99mTc 製剤は心電図同期定量解析(quantitative gated SPECT:QGS)に適しており,それにより
心機能評価が可能である.壁運動の存在あるいは壁厚の増加は心筋バイアビリティありを示唆し,QGS の併用が診断能,予後予測能を向上させる635)

 脂肪酸代謝障害イメージングである123 I-BMIPP SPECTは,梗塞心筋の診断精度において心筋血流イメージングと同等である636,637).再灌流療法が成功
すると,201Tl による血流と123 I-BMIPP により示される代謝の乖離がみられ,乖離した領域はその後の心機能の回復が期待できる638,639).123 I-BMIPP
SPECT はrisk area も含むため,梗塞サイズを過剰評価しやすい.

 壊死心筋を陽性描出する99mTc pyrophosphate(ピロリン酸)は梗塞心筋の定量化を可能にし, CK 最高値と良好な相関を示し640),遠隔期の予後予測に
有用641) ではあるが,他の画像診断が進歩した今日,その有用性は限られている.

 心臓核医学については,『心臓核医学検査ガイドライン(2010 年改訂版)』642) に詳細な記述がある.
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