ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 

 残存冠動脈病変に対する冠血行再建法の選択は,個々の症例に応じて冠動脈病変や残存心機能,基礎疾患などを考慮して行わなければならない.冠動脈病変からみた血行再建法選択は一般の安定狭心症に対する血行再建法に準ずるものと考えられる.冠動脈血行再建法としてのPCI とCABG の選択については,別のガイドラインとして『安定冠動脈疾患における待機的PCI のガイドライン(2011年改訂版)』675) ならびに『虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン(2011 年改訂版)』676) があり,これらを参照されたい.

 残存病変に対する緊急血行再建術の治療法について検討した無作為試験はないが,3 枝病変例や左主幹部病変例を対象としたSYNTAX 試験(心筋梗塞の既往を有する例が33 %含まれる)677) では,4 年間の心筋梗塞発症率はCABG 施行例3.3 %とPCI 施行例9.0 %と前者で低く678),この点なども治療法の選択において考慮する.自然再疎通した3 枝病変例や左主幹部病変ないし左前下行枝近位部に高度狭窄が残存する患者などでは,画一的に緊急にPCI を施行するのではなく,CABG 適応をも考慮して循環器内科医と心臓血管外科医を含めたハートチームで治療法を検討することが重要である.

 CABG の至適な手術時期については一定の見解が得られていないが,48 時間以内の急性期に緊急CABG を行わざるをえなかった患者では成績が不良であり,それ以降の時期では通常の待機手術と変わらないリスクで手術が行えるという報告がある266,268).2 剤の抗血小板薬を中止する必要性などを踏まえ,手術施行時期を十分に考慮する必要がある.
10.2 冠血行再建法の選択
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