ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 
4. プラーク破綻以外の原因で起こる心筋梗塞
 STEMI を発症したにもかかわらず,冠動脈造影および剖検で冠動脈硬化を認めない症例が全体の約6 %に存在したという報告がある3).とくに,35 歳以下の梗塞発症例の24 %がこのような症例に該当したとされており,動脈硬化の程度が比較的軽い若年者においては他の原因を念頭に置く必要がある.動脈硬化以外の発症機序としては,動脈炎(高安病,川崎病,梅毒,脊椎炎など),外因性(外傷,医原性,放射線治療など),代謝性疾患または内膜肥厚性疾患に伴う冠動脈壁肥厚(Hurler 病,ホモシステイン尿症,Fabry 病,アミロイドーシスなど),その他の原因に伴う冠動脈狭小化(急性大動脈解離,冠動脈攣縮など),冠動脈塞栓症(感染性心内膜炎,僧帽弁逸脱,粘液腫,壁在血栓など),先天性の冠動脈奇形(起始異常,動静脈吻合,冠動脈瘤など),心筋における酸素需給のアンバランス(大動脈弁狭窄,CO 中毒,甲状腺中毒症,低血圧遷延など),凝固異常(真性多血症,DIC〈播種性血管内凝固症候群〉など)など多彩な原因が挙げられる23).このうち,わが国においては冠攣縮性狭心症の頻度が高い17,24,25)
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