ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 
1.3 心筋灌流画像診断
クラス I
・冠動脈造影検査を行わない患者で,運動負荷が困難な例の負荷心筋シンチグラフィによる心筋虚血判定. レベルB
・慢性期に心筋バイアビリティの判定のために行う運動負荷心筋シンチグラフィ. レベルB
・梗塞範囲の評価と長期予後の予測の目的で行う心筋シンチグラフィ. レベルB
クラス IIa
・梗塞周辺の気絶心筋検出を目的とした123I-BMIPP 検査. レベルC
・MRI による心筋梗塞の範囲,深達度や微小循環障害の評価. レベルB
 99mTC 製剤は,臨床的には201Tl とほぼ同様の有用性が示されており,201Tl 製剤で示されたエビデンスは99mTc 製剤に応用できると考えられている720).安静時の201Tl SPECT 欠損像は心筋梗塞範囲に相関する625,626).いずれの核種によっても,負荷シンチグラフィが陰性の予後は良好である721-726).なお,ジピリダモール負荷やATP による虚血の誘発は,アデノシンの代用として長年に渡って使用されてきた実績がある723,727)

 梗塞後の心筋バイアビリティの評価にはさまざまな手法がある.心筋の血流および心筋細胞の生存を評価する方法としては,201Tl があり,一般に50 %以上の% uptake が計測された場合を残存心筋ありとすることが多い.一方,梗塞周辺部には,急性の心筋虚血が解除されたのちも壁運動が低下した気絶心筋(stunned myocardium)が存在する.この部位では心筋は生存していても虚血性の脂肪酸代謝を呈することが多く,123 I-BMIPP(脂肪酸代謝)イメージが有用であり,いわゆる血流との乖離現象を呈するが,数週間から数か月の経過で壁運動とともに回復する636,728,729).STEMI 患者を対象にした研究では,血流代謝の集積乖離や123 I-BMIPP 欠損の大きさは,心事故の予後規定因子と考えられる637)

 造影心臓MRI 検査によって,心筋梗塞の範囲,その貫壁性深達度や微小循環障害が評価でき.それらの程度が強いほど壁運動の改善が悪く心筋リモデリングを生じやすくなり654,662,730),長期予後が不良である668,673,731)

最近になり,通常の心筋血流シンチグラフィで判定困難な場合に限定し,心筋梗塞,虚血性心疾患による心不全患者で心筋バイアビリティ診断が必要とされる患者に,PETの保険適応が拡大され実施可能となった.

PET,SPECT,ドブタミン負荷心エコー法を用いて心筋バイアビリティ評価と心筋血行再建後の予後予測能が検討された.それぞれの検査法で利点はあるものの,その差は小さい732,733).
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