ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 

 STEMI 患者の15~20 %に重症うつ病が発生し,なんらかのうつ状態に陥る患者は約半数にのぼる813).抑うつは患者のQOL を著しく悪化させる369) ばか
りでなく,長期予後不良にも関係する.すなわちSTEMI 後に抑うつを有する患者は死亡リスクが高い814).したがって,うつ病,不安,睡眠障害の症状や社会
的サポート状態などを含む患者の心理社会的状態を評価することが推奨される369)

 また,認知行動療法と選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の併用により,うつ症状と社会的機能が改善すると報告されており815,816),退院後1 年以
内にうつ病を発症したSTEMI 患者に推奨される.わが国の成績としては,入院したSTEMI患者の27 %が抑うつ傾向を示したが,3 か月間の心臓リハビリ
テーション実施後に抑うつスコアの改善が認められたとの報告がある782)

 抑うつ以外に,社会的孤立(social isolation:配偶者,家族,友人の欠如や独居)も予後不良に関連する817).これまでの研究では,社会的支援と抑うつ管
理により生命予後は改善しないが社会的孤立が軽減すること818),電話訪問,心臓リハビリテーション,グループ活動などが有効であること819),心臓リハビリ
テーションプログラムにおける心理社会的介入により死亡率や再発率が改善すること820) が報告されている.不安は入院したSTEMI 患者では頻度が高い
が,退院後に比較的急速に軽減するとされる821).高齢者は,心臓リハビリテーションによる心理社会的要素の改善効果が中年者に比べ少ないこと822) が報
告されている.レジスタンストレーニングは,筋力や運動耐容能の改善のみならずQOL 改善にも有用であるとの報告がある818)
3.3 患者と家族に対する心理社会的環境整備
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