ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
近年,心筋梗塞の診断や治療のレベル(質)を測定し,評価を与え,これを改善しようとする多面的かつ組織的な試みが,ACC やAHA を中心として開始さ
れている841-843).一般に医療の質は,①構造(設備,人的資源,診療実績など),②プロセス(診断,適応決定,治療内容など),③リスク調整アウトカム,に
分類されるが,ACC/AHA による質改善の力点は「プロセス」に置かれている.
その最初のステップは本稿のような「診療ガイドライン」の策定であるが,実際に行われた治療の質を吟味し,改善につなげるためには,「測定可能」な臨床
インディケータを設定し,その比較評価(トレンド解析やベンチマーキング)を行わなければならない.こうした質改善(quality improvement : QI)活動は,施設
レベル,地域レベル,国レベルで可能である842,844,845).
全国レベルのような多施設間でのベンチマーキングでは,臨床インディケータの選択と定義づけがきわめて重要となるが,①エビデンスに基づく質改善に有
用な指標であり,②分子や分母となる項目に曖昧さがなく,③その収集に手間がかからないことが求められる843).表13 に示すACC/AHAによるSTEMI パ
フォーマンス測定指標843) は,この要件に配慮して作成されており,診断と患者教育に関わる指標をそれぞれ1 つずつ含むが,他はすべて治療プロセスに関
する項目となっている.いずれの項目もACC/AHA ガイドラインにおいてクラス I として推奨される治療であり369,846),いわばガイドライン準拠治療を促進する
意味での質改善を目指すものとなっている.