ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 
測定指標定義
到着時のアスピリン禁忌のない症例における病院到着前後24 時間以内でのアスピリン投与
退院時のアスピリン処方禁忌のない症例におけるアスピリンの退院時処方
到着時のβ 遮断薬禁忌のない症例における病院到着後24 時間以内でのβ 遮断薬投与
退院時のβ 遮断薬処方禁忌のない症例におけるβ 遮断薬の退院時処方
LDL コレステロール測定LDL コレステロール値のカルテ記載(あるいは測定した事実や測定計画の記載)
退院時の脂質代謝改善薬LDL コレステロール> 100mg/dL の症例における脂質代謝改善薬の退院時処方
左室収縮能低下患者における退院時の
ACE 阻害薬またはARB
禁忌のない左室収縮能低下患者におけるACE 阻害薬またはARB の退院時処方
血栓溶解治療までの時間
ST 上昇あるいは左脚ブロック患者における病院到着から血栓溶解薬投与までの中央値
(30 分以内推奨)
PCI までの時間ST 上昇あるいは左脚ブロック患者における病院到着からPCI までの中央値(90 分以内推奨)
再灌流治療ST 上昇症例における血栓溶解治療あるいはPCI の施行
禁煙指導喫煙歴を有する症例における入院期間中の禁煙指導,カウンセリングの実施
1. STEMI診療の質の測定と評価
クラス I
・臨床インディケータを設定し,その抽出が可能な診療実績の電磁的データベースを構築する. レベルC
・各施設で設定した臨床インディケータについて,経時的変化(トレンド)を解析し,その改善策を実施する. レベルC
・施設間で共通の臨床インディケータに基づいて,ベンチマーキングを行い, その改善策を実施する. レベルC
・全国レベルの急性心筋梗塞データレジストリーに参加する. レベルC
 近年,心筋梗塞の診断や治療のレベル(質)を測定し,評価を与え,これを改善しようとする多面的かつ組織的な試みが,ACC やAHA を中心として開始さ
れている841-843).一般に医療の質は,①構造(設備,人的資源,診療実績など),②プロセス(診断,適応決定,治療内容など),③リスク調整アウトカム,に
分類されるが,ACC/AHA による質改善の力点は「プロセス」に置かれている.

 その最初のステップは本稿のような「診療ガイドライン」の策定であるが,実際に行われた治療の質を吟味し,改善につなげるためには,「測定可能」な臨床
インディケータを設定し,その比較評価(トレンド解析やベンチマーキング)を行わなければならない.こうした質改善(quality improvement : QI)活動は,施設
レベル,地域レベル,国レベルで可能である842,844,845)

 全国レベルのような多施設間でのベンチマーキングでは,臨床インディケータの選択と定義づけがきわめて重要となるが,①エビデンスに基づく質改善に有
用な指標であり,②分子や分母となる項目に曖昧さがなく,③その収集に手間がかからないことが求められる843)表13 に示すACC/AHAによるSTEMI パ
フォーマンス測定指標843) は,この要件に配慮して作成されており,診断と患者教育に関わる指標をそれぞれ1 つずつ含むが,他はすべて治療プロセスに関
する項目となっている.いずれの項目もACC/AHA ガイドラインにおいてクラス I として推奨される治療であり369,846),いわばガイドライン準拠治療を促進する
意味での質改善を目指すものとなっている.
表13 ACC/AHA のSTEMI に対するパフォーマンス測定指標
(Krumholz HM, et al. 2006843) より引用改変)
次へ