ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 
2. 心筋梗塞の定義とガイドラインの対象
 心筋梗塞は,病理学的に遷延する心筋虚血に起因する心筋細胞の壊死と定義される.このため急性心筋梗塞の診断では,心筋虚血の存在を示唆する胸部症状や心電図変化の存在に加え,心筋壊死を示す生化学マーカーの一過性上昇(理想的にはuniversal definition に基づいた心筋特異性の高い心筋トロポニンが健常者の上限値の99 %値を超える一過性の上昇,下降を示す急性変化)を認めることが必須条件である1) .本ガイドラインでは,心電図で持続的ST上昇を認めるST 上昇型急性冠症候群,あるいはその疑いのある患者を対象とし,また急性冠症候群のうち左脚ブロックや標準12 誘導心電図でST 上昇を認めない純後壁梗塞の患者も含むことにした.ST 上昇型急性冠症候群の90 %以上は心筋マーカーの上昇を伴い,急性心筋梗塞と診断される.ガイドラインの名称では,2002 年に発表された『急性冠症候群の診療に関するガイドライン』が2012年の改訂版で『非ST 上昇型急性冠症候群の診療に関するガイドライン』と変更されており,これを受けて本ガイドラインも急性心筋梗塞の名称は残しつつ『ST 上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン』に変更した.
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