ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 
1.2 血栓溶解療法の禁忌
絶対的禁忌
① 頭蓋内出血の既往(時期を問わず),6 か月以内の脳梗塞.
②既知の頭蓋内新生物,動静脈奇形.
③活動性出血.
④大動脈解離およびその疑い.

相対的禁忌
①コントロール不良の重症高血圧(180/110 mmHg 以上).
②禁忌に属さない脳血管障害の既往.
③出血性素因,抗凝固療法中.
④ 頭部外傷,長時間(10 分以上)の心肺蘇生法,または大手術(3 週間未満)などの最近の外傷既往(2~4週間以内).
⑤圧迫困難な血管穿刺.
⑥最近(2~4 週以内)の内出血.
⑦線溶薬に対する過敏反応.
⑧妊娠.
⑨活動性消化管出血.
⑩慢性重症高血圧の既往.

 年齢が75 歳以上の場合や発症後12 時間を超過している場合でも状況に応じて適応となるが,高度の高血圧を認める患者,発症後24 時間以上を経過して症状のない場合や,ST 下降だけの場合は
クラス III である.とくに高齢者や,発症後時間の経過した状況では脳出血,心破裂(自由壁破裂),心室中隔穿孔の発症頻度が高くなり,血栓溶解療法の適用にあたっては,絶対および相対的禁忌を十分認識しておく必要がある.わが国では,PCI が普及し,血栓溶解療法の使用頻度は減少しているが,非専門施設から搬送に時間がかかることが予測される場合や医療過疎地などでは十分考慮されるべき治療である.使用法としてはモンテプラーゼ13750~27500 単位/kg を静脈内投与する.半量投与と比べ全量投与では,出血性合併症は増加するが,TIMI 血流分類2 以上の再疎通率は上昇しない.このため引き続いてPCI を行う可能性を考慮し半量投与(例:体重60kg では1 バイアル80 万単位の薬剤を生理食塩液10mL に溶解し1 分で静注)とすることが多い.
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