ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 
9.5.2 心筋バイアビリティ
 LGE-MRI は心梗塞後の心筋バイアビリティの評価にも優れている.ガドリニウム投与後,少なくとも10 分後に撮影したLGE-MRI では,梗塞に伴う心筋の
壊死領域と不可逆的傷害部位は高信号を呈し,可逆的傷害部位は造影されない657,658)

 非貫壁性の壊死領域はドブタミンに対する反応低下を示す659).LGE-MRI による心筋の線維化部分の評価は,ポジトロン放出型断層撮影法(positron
emission tomography:PET)の所見とよく一致する660).LGE-MRIでは,梗塞巣の存在,部位,貫壁性の有無が正確に診断できる661).

 急性心筋梗塞患者で,壁運動は低下しているものの,遅延造影の占める割合が少ない部分は,PCI やCABG による血行再建による壁運動の改善が予
想される領域である.また,梗塞発症後1 週間以内に行われたLGE-MRI で,梗塞が認められないか,あるいは梗塞の範囲が左室壁厚の25 %以下である
場合,3 か月後には収縮性の全体的な改善が認められることが報告されている662).梗塞後早期における遅延造影は早期の血流の回復と収縮機能の改善
に関連し663),再灌流療法後の左室収縮機能の改善の指標となることが報告されている664,665).再灌流療法に伴う局所壁運動の改善は,遅延造影の貫壁
性の広がりが増加するほど低下する.逆に,非造影の壁厚が収縮期壁肥厚率の指標となるとの報告もある666)

 LGE-MRI は,冬眠心筋の特定にも用いることができる.遅延造影での非造影部が収縮不全を示していていれば,その部分は冬眠心筋と考えられる667)
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