ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
目次
SiteMap
戻る
心エコーは,局所壁運動異常による急性心筋梗塞の診断,左室収縮機能・拡張機能の評価のみならず,外科的治療の適応となることが多い
機械的合併症(53 ㌻)
の診断や急性大動脈解離,急性肺血栓塞栓症との鑑別に有用である.局所壁運動異常による急性心筋梗塞の診断率は90 %を超え,心電図診断が困難な場合にも有用である
143,144)
.壁運動異常部位の範囲から虚血範囲や責任冠動脈を推測することができる.梗塞発症早期に低血圧を呈する最も多い原因は急性下壁梗塞患者でみられる迷走神経過緊張である.このような患者では心エコーで前側壁領域の壁運動が良好であり,広範な右室梗塞や機械的合併症を認めなければ左室心筋原性ショックは否定される.機械的合併症のなかで,左室自由壁破裂は最も重篤で急速に死に至ることも多い.心膜液の貯留(echo free space)を認めるが,貯留量が少ない場合でも右室拡張早期の虚脱(diastolic collapse)は心タンポナーデの指標となる.
心室中隔穿孔はカラーDoppler 法でシャント血流の存在から穿孔部位を確認できる.乳頭筋が心筋虚血に陥り,機能不全あるいは断裂が起こると僧帽弁逆流を生じる.とくに乳頭筋断裂では僧帽弁逆流により急激に重篤な心不全を生じる.
断層像では断裂した乳頭筋が腱索に付着し,可動性の塊状エコーとしてみられる.胸痛を認める心血管疾患で,急性大動脈解離(上行大動脈や腹部大動脈のintimal flap〈剥離内膜〉,大動脈弁逆流,心膜液貯留),急性肺血栓塞栓症(右房および右室の拡大,左室の圧排像),急性心膜炎(局所壁運動異常のない心膜液貯留)などの疾患との鑑別にも心エコーは有用である.しかし,STEMI の診断が明らかな患者で心エコー施行のために再灌流療法が遅れてはならない.
クラス I
・標準的診断法で確定できないが急性心筋梗塞が疑われる患者の診断.
レベルC
・心筋虚血に曝されている領域の評価.
レベルC
・急性期における左室機能の評価.
レベルC
・下壁梗塞で右室梗塞の合併の可能性がある患者の診断.
レベルC
・機械的合併症の診断.
レベルC
・左室壁在血栓の診断.
レベルC
クラス IIa
・再灌流療法後の心機能の評価.
レベルC
クラス IIb
・標準的診断法で確定した急性心筋梗塞の追加診断.
レベルC
次へ
2.5.2 心エコー法
Home
IV. 初期診断,治療,管理
2. 患者の初期評価(表3)
2.5 画像診断
2.5.2 心エコー法