ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 
クラス I
・あらゆる地域において,chain of survival(迅速な119 番通報,迅速な心肺蘇生法,迅速な電気的除細動,迅速な二次救命処置)の4 つの命の鎖を構築する.
   レベルC
・心疾患を有する患者とその家族にchain of survival の最初の3 つの鎖を習得してもらう市民向け講習会をおのおのの地域で開催する. レベルB

 
消防署
図3 救急車を呼ぶ手順
通報者
わかりました.
救急車向かいます
火事ですか?
救急ですか? 救急です
どうしましたか? 見たまま,事故の状況,
傷病者の状態を説明
そこは何区,何町,
何丁目,何番,何号ですか?
通報している住所
119
救急車が着くまで周囲の
人と協力して応急手当,
救急隊の案内通報
意識の有無?
突然倒れた
十分な呼吸?
AED,救急隊?胸骨圧迫(100 回/ 分)
 強く,速く,絶え間なく
・助けを呼ぶ
・119 番とAED 要請
・気道の確保
いいえ
いいえ
いいえ
・AED の音声に従う
 STEMI 総患者の14 %以上が,発症超早期に致死性不整脈(大多数が心室細動〈ventricular fibrillation:VF〉)を併発し死亡している.このVF 出現率は心
臓性院外心停止例の60 %を占める61).しかし,消防隊員,救急隊員が患者に接触し,自動体外式除細動器(automated external defibrillator:AED)を装着
するまでに循環虚脱を目撃してから12 分前後を要する69).より迅速なAED による電気的除細動は生存率を有意に改善させることから(除細動が1 分遅れる
と生存率は7~10 %ずつ減少する),市民による迅速なAED の運用が必要である62).この間(AEDが届くまで),市民による迅速な119 番通報と迅速な心肺
蘇生法(cardiopulmonary resuscitation:CPR)を開始し,体循環,肺循環を維持させることが大切である.この市民によるCPR 手法は,わが国の大規模観
察研究において,胸骨圧迫だけのCPR が従来の口対口人工呼吸+胸骨圧迫CPR より優れているかまたは同程度であることが報告された70,71).これらの
報告をもとに,2010 年ILCOR のCoSTR とAHA,およびわが国のCPR ガイドラインでは,成人心停止患者のBLS(basic life support)は,市民による簡単な
胸骨圧迫だけのCPR が,推奨レベルでクラス Iとなった.

 AED が届くまで,または救急隊が来るまでの市民による救助活動を図2 に,救急車を呼ぶ手順を図3 に示す.
2. 病院到着前心停止
図2 市民の命を救う救急対応
①救助者は,反応が見られず, 呼吸をしていない, あるいは死戦期呼吸のある傷病者に対しては,ただちに CPR を開始するべきである.
②死戦期呼吸とは心停止を示唆する異常な呼吸である.死戦期呼吸を認める場合も CPR の開始を遅らせるべきではない.
③心停止と判断した場合, 救助者は気道確保や人工呼吸より先に胸骨圧迫から CPR を開始する.
④すべての救助者は, 訓練の有無にかかわらず, 心停止の傷病者に対して胸骨圧迫を実施するべきである.
⑤CPR の訓練を受けていない救助者は, 119 番通報をして通信指令員の指示を仰ぐべきである.
⑥通信指令員は訓練を受けていない救助者に対して電話で胸骨圧迫だけの CPR を指導するべきである.
⑦質の高い胸骨圧迫を行うことの重要性がさらに強調された.救助者は少なくとも 5cm の深さで, 1 分間あたり少なくとも100 回のテンポで胸骨圧迫を行い, 胸骨圧迫解除時には完全に胸郭を元に戻す.
⑧胸骨圧迫の中断を最小にするべきである.
⑨訓練を受けた救助者は, 胸骨圧迫と人工呼吸を 30:2 の比で行うことが推奨される.
図3 救急車を呼ぶ手順
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