ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 
 STEMI では正しい治療を受けるまでの時間を短縮すれば,死亡率と合併症発生率を有意に低下させることができる66-68,72).したがって,病院前の救急医療従事者( 救急救命士,救急隊員〈旧救急Ⅰ課程,旧救急Ⅱ課程,救急標準課程の修了者〉,その他の消防職員)や119 番通報を受ける通信指令室の通信指令員は,正しい病院選択の知識を習得するとともに,循環器専門施設の循環器専門医と交流を密にし,迅速な患者受け入れ体制を検証し構築していくことが必要である.総務省消防庁や東京消防庁が毎年報告している救急活動の現況または実態では,119 番通報から病院収容までの平均活動時間は約30 分(119 番から患者接触までの時間が約9 分)である73,74)

 なお,わが国の救急救命士は,心肺停止傷病者に対してだけ,器具を用いた気道確保(一部の救急救命士には気管挿管も可能)とAED を用いた電気的除細動,および末梢静脈路確保と細胞外液製剤の投与(一部の救急救命士にアドレナリン1 mg/ 回の静脈投与)が許可されている.しかし,12 誘導心電図記録は標準化(4 点誘導の心電図モニターが標準化)されていない73,74).このため心肺停止以外の傷病者に救急隊員(救急救命士を含め)が提供できる救急医療行為は,バイタルサイン,身体所見の観察,酸素投与,体位管理,心電図モニターとパルスオキシメータの観察などに限られる73,74)
3. 救急医療体制
クラス I
・胸痛を有する患者や心停止が疑われる患者に対応する医療従事者は,胸痛のトリアージとCPR(AEDと標準的救命処置を含む)の知識と技能を備える. レベルA
・119 番通報に対応する救急隊員は,医学的訓練を受け,おのおのの地域の活動マニュアルに従い,迅速かつ的確な助言を行う. レベルC
・循環器専門施設はおのおのの地域の消防署・庁と連絡を密にし,迅速に患者を受け入れる体制を構築する.レベルA
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