ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 
クラス I
・心原性ショックまたは血行動態が不安定な患者に対するPCI. レベルB
・重度の心不全もしくは肺水腫を合併している場合にPCI を考慮すべきである. レベルB
・血行動態を脅かす心室不整脈を認める場合にPCI を考慮すべきである. レベルC
・回復期において,中等度から重度の心筋虚血が認められる患者に対して行う. レベルB
クラス IIa
・血行動態,電気生理的不安定もしくは遷延する虚血症状を有する場合のPCI. レベルC
・再灌流が得られていないことを示唆する心電図所見を有する場合,もしくは心筋のリスク領域が中~広範囲であると考えられる場合のPCI. レベルB
・心不全の合併や低心機能,心筋梗塞の既往といった高リスクの症例の場合に,できるだけ早期にPCI 施行可能な施設へ搬送しPCI を考慮すべきである. レベルB
・急性期に心不全の徴候が認められる患者に行うPCI.レベルC
クラス IIb
・心不全の合併や低心機能,心筋梗塞の既往といった高リスク患者でない場合に,できるだけ早期にPCI 施行可能な施設へ搬送しPCI を考慮してよい. レベルB
・発症から24 時間以上経過した時点での,再灌流はしているが有意な狭窄を有する梗塞責任血管に対するPCI. レベルB
クラス III
・発症から24 時間以上経過した時点での,血行動態的および電気生理的安定の得られた重度の虚血のエビデンスのない無症状の患者に対する完全閉塞している
  梗塞責任血管へのPCI. レベルA
3. 血栓溶解療法後のPCI
 従来,血栓溶解療法後に行うPCI はfacilitated PCI とrescue PCI に分けて考えられてきた.facilitated PCI とはPCI 治療を行うことを前提にPCI に先立ち薬物療法(血栓溶解療法,抗血小板療法,両者の併用)を行い,引き続き計画されたPCI を行う治療法であるのに対して,rescue PCI は先行する血栓溶解療法が不成功,もしくはなんらかの理由で血栓溶解療法後に行われるPCI 治療である.しかし現在のSTEMI に対する治療法選択においてこの2 つの区分は重要ではないと考えられ,血栓溶解療法後のPCI としてまとめて記載する.また,PCI が施行できない施設において血栓溶解療法が施行された際に,再灌流の徴候の有無に関わらずPCI 可能な施設に搬送し血管造影およびPCI を行うsystematic PCI という概念があり,高リスクの患者において,近年,このsystematic PCI が血栓溶解療法単独に比較し良好な治療成績であることが報告されている83,84).さらにsystematic PCI はprimary PCI と比べ,死亡率に差はないとの報告もある256,257).重要なことは治療法として血栓溶解療法が選択された場合に,患者が高リスクであるか否かを判断することであり,高リスクと判断した場合には,血管造影およびPCI を考慮するためにできる
だけ早期にPCI 可能な施設に患者を搬送すべきことである83,84)
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