ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
緊急心臓カテーテル時に梗塞責任血管の開存が確認でき,解剖学的にPCI に不適病変か,左主幹部病変や多枝病変の患者などでも緊急CABG の適応を考慮す
る.しかし,STEMI 患者に緊急CABG が必要とされる割合は,血行再建までの時間や血行動態の不安定さを反映し,3.2~10.9%と多くはない258,259).緊急CABG治
療例で病院死亡率は,準緊急および待機的CABG と比べ高く258,260-266),患者の術前状態が悪化するにつれて高率となる267).STEMI 後のCABG の至適手術時期
については一定の見解はないが,48 時間以内の急性期に緊急CABG を行わざるをえなかった症例では成績が不良であり,それ以降の時期では通常の待機手術と
変わらないリスクで手術が行えるという報告がある266,268).また緊急CABG の成績は,手術時期の問題だけではなく,患者の年齢,他臓器機能など個々の患者背景
によっても左右される.また,まれにprimary PCI 不成功の患者に行われることがあるが,CABG のリスクは高く,有効性は明らかでない.
心原性ショックを合併した患者では,心筋梗塞発症あるいはショックの出現から,できるかぎり早期にCABG を施行すればその治療効果は大きく,その有効性が期
待できる期間も比較的長い可能性がある.このため発症あるいは診断から手術までの時間にかかわらず,CABG の施行も検討すべきである151a, 269-271).
人工心肺を使用しない心拍動下CABG の緊急手術への適応の妥当性に関しては確固たるエビデンスはないものの,心拍動下CABG を施行することによって,低侵
襲で術後合併症の発生も少なく手術死亡率を低く抑えられると判断できれば,その施設の条件も考慮して適応してもよい272).