ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 
5. 再灌流の評価
 血栓溶解療法では非侵襲的に,症状の軽減,血行動態や電気生理的安定化,心電図監視における初期のST 上昇からの減高などから再灌流の有無を推
察する273).CK(クレアチンキナーゼ),CK-MB(クレアチンキナーゼMB)の経時的測定では,再灌流例では血栓溶解療法開始60~90分で前値の5~10 倍と
急激に上昇し,ピーク値に達する274).血栓溶解療法の開始から60 分~90 分経過してもこれらの徴候がなければ,再灌流が得られていない可能性が高いの
で,rescue PCIを検討する.また,経胸壁冠動脈エコーによる血流速シグナルにより,再灌流が判断できるとする報告もある275)

 primary PCI 施行患者では,冠動脈造影で冠動脈血流を評価する.TIMI 血流分類は順行性の冠動脈血流を分類したもので,PCI で狭窄病変を解除しても
TIMI 血流分類2以下の造影遅延があるものは予後不良であり,TIMI 血流分類3 だけが再灌流成功と評価される276).またTIMI frame count ではシネのフ
レーム数から,より客観的に冠動脈血流を評価することができる277).さらに心外膜側の冠動脈の血流回復だけでは不十分であり,心筋レベルでの微小循環
を回復することがより重要である.実際,血栓溶解療法によりTIMI 血流分類3 が得られても,心筋コントラストエコー法ではコントラスト効果が欠損したno
reflow 現象が約1/4 の患者に認められ,その予後は不良である278).myocardial blush grade は造影剤によるすりガラス様の心筋染影(blush)により心筋灌
流を評価するもので,心筋コントラストエコー所見ともよく相関し,冠動脈血流とは独立した予後の規定因子である279,280).冠動脈血流速シグナルにより微小
循環障害を判定し,左室機能回復や予後予測が可能である281).またprimary PCI においても前述の心電図におけるST 上昇の減高は心筋レベルでの再灌
流を示唆する. 
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