ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 
7.2.1 抗トロンビン薬(直接トロンビン阻害薬)
 わが国で未分画ヘパリンの代わりに静脈内投与できる唯一の抗トロンビン薬はアルガトロバンである.米国では,血栓溶解療法時の併用薬として未分画ヘ
パリンと同等の有用性が認められ296),HIT を合併した急性冠症候群患者のPCI 施行時にも使用される297).わが国では,HIT における血栓症の発症抑制に適
応とされていたが,2011 年にHIT 患者(発症リスクのある場合を含む)におけるPCI 施行時の抗凝固薬としても認可された.

 PCI施行時は,0.1 mg/kgを3~5分かけて静脈内投与し,術後4 時間まで6 μg/kg/ 分 を目安に静脈内持続投与する.投与開始から10 分程度でACT を測
定し,術後4 時間まではACT が250 ~ 450 秒となるように持続投与量を調節する298).患者の状態により術後4 時間以降の抗凝固療法の継続の要否を判断
し,必要な場合は0.7μg/kg/ 分に減量後,適宜APTT を測定し,APTT が投与前値の1.5 ~ 3倍程度となるよう持続投与量を調節する(3 倍を超えた場合は,
投与をいったん中止する).なお持続投与量は目安であり,適切な凝固能のモニタリング下で出血リスクなどを考慮し適宜調整する.とくに,本剤は肝代謝のた
め肝機能障害患者では投与量を減じる必要がある(肝障害患者では術後4 時間以降も持続投与が必要な場合は0.2 μg/kg/分に減量する).
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