ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 
クラス IIa
・発症12 時間以内にPCI を行う場合の静脈内投与. レベルB
8.1 カルペリチド
 カルペリチド(A 型ナトリウム利尿ペプチド)は,わが国で開発された薬物で,血管拡張作用,利尿作用を持っており,急性心不全に対して広く使用されている.カルペリチドは,虚血プレコンディショニング,ポストコンディショニング効果を有すると報告されている.reperfusion injury salvage kinase 活性化作用があるとされ,再灌流傷
害に対して有用であると考えられている.このため,可能であれば再灌流前から投与を開始し,0.025μg/kg/ 分で3日間使用する.ただし,血圧などに十分注意しながら使用する.また,交感神経系拮抗作用や,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系抑制効果があり心筋線維化抑制により左室リモデリング抑制効果があると考えられている.

 Hayashi,Kasama らの報告により,カルペリチド投与は硝酸薬投与と比較してST の再上昇や再灌流性不整脈などの再灌流傷害の発生やリモデリングを抑制し,心臓交感神経活性を改善することが示された322,323).その後,わが国で行われたJ-WIND-ANP では,569 名の患者を対象としてPCI による再灌流療法施行前から0.025μg/kg/ 分を3日間にわたり静注するカルペリチド群とコントロール群の比較検討では,カルペリチド投与群ではプラセボ投与群と比較して梗塞サイズ(Σ CK)が14.7 %減少し,慢性期の左室駆出率は5.1 %の増加を認めた.またその後の追跡(中央値2.7 年間)では心臓死,心不全による再入院を減少させ,予後改善効果も認めた324)
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