ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)
Guidelines for the management of patients with ST-elevation acute myocardial infarction
(JCS 2013)
 
クラス IIa
・発症12 時間以内のSTEMI 患者に対して,PCI を行う際に冠微小循環改善を目的とした投与. レベルC
 ニコランジルは,ATP 感受性カリウム(KATP)チャネル開口薬である.ジアゾキサイドなどのKATP チャネル開口薬とは異なりNO(一酸化窒素)ドナーであ
る点が大きな特徴である.心筋梗塞に対してPCI を行った患者におけるニコランジル追加療法の有効性を示す報告は,おもに小規模で単施設という限定はあ
るものの多くの報告がある.Ito らは,ニコランジルを静注でPCI 前に4 mg を単回投与し,その後24 時間6 mg/ 時投与により,心筋コントラストエコー法による
no reflow 現象の抑制効果を報告している325).また,Ishii らにより,primary PCI 直前にニコランジルを約30 分かけて12 mg 静脈内投与することにより,TIMI
frame count や,ST resolution で評価した急性期の微小循環障害が改善することが報告された326).Iwakuraらのメタ解析327) の報告では,ニコランジル投与
によりPCI 後の良好な冠血流を示すTIMI 血流分類3 を高率に認めた.また,ニコランジルの冠動脈内投与はno reflow 部位を含む梗塞心筋の血流増加と慢
性期壁運動の改善や328),冠微小血管抵抗指数の改善に有効であると報告されている329).これらの報告では,2 mg を30 秒以上かけて投与しているが,こ
れ以上の高用量や急速な冠動脈内投与では心室不整脈が誘発される可能性があり注意が必要である.

 一方,J-WIND-KATP では,ニコランジルを静注で0.067mg/kg ボーラス投与のあと,24 時間1.67μg/kg/ 分投与を行うプロトコールであったが,急性心筋梗
塞の梗塞サイズ(Σ CK)と予後では改善効果が認められなかった324)
8.2 ニコランジル
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